【3000文字チャレンジ】屋久島へ旅してみませんか?そして愛を取り戻してみませんか?

【3000文字チャレンジ】屋久島へ旅してみませんか?そして愛を取り戻してみませんか?
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3000文字チャレンジ! お題:「旅」

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「ユワッシャッー!!愛で空が落ちてくるー!!ユワッシャー!!俺の胸に落ちてくるー!!熱い心 鎖で繋いでも今は無駄だよ!邪魔するやーつは指先ひとつでダウンさぁぁぁー!!」

キツイ勾配の、緑が鬱蒼と茂る山道をすでに汗だく、どろどろ、疲労困憊のぼくたちは気力を絞って登っていく。

男4、女1の5人のパーティー編成だ。

あまりにツライ登りの山道に「も、もうダメだ・・・・」と呟く仲間の、勇気と体力の最後の一滴までを絞り出させようと選んだ歌が、なぜ北斗の拳のOPテーマでお馴染みの「愛をとりもどせ!!」だったのかは、今となってはもう思い出せない。

ちなみに「愛をとりもどせ!!」の歌詞の「ユワッシャー!!」の部分。
正しくは「YouはShock!!」らしい。

だから音で表現するなら「ユワッシャー!!」ではなく「ユワッショー!!」になるはずだが、何度聞いても「ユワッシャー!!」に聞こえる。。

はてさて、そんなことは、置いといて・・・だ。

この「愛をとりもどせ!!」を半分絶叫するかのように歌いながら、たどり着いた先がぼくたちの「旅」のハイライトたるべき場所だった。

どんな場所にたどり着いたのかは後述するとして、ぼくの一番思い出深い「旅」の話を今回は綴ってみようと思う。

 




 

あれは今から13年前のこと、大学3回生の暑い夏だった。

その頃、大学内でいつも一緒に飲み会をしたり、勉強したりしている仲良しグループがあった。
そのグループは全員同じ学科で、ぼくを含め3回生の男子4人と、一つ上の4回生のお姉さま方4人、計8人のグループだった。

ある日、夏休みにみんなで屋久島に行こうぜ!という企画が持ち上がった。
企画名は「男女8人夏物語in屋久島」である。うーん、何ともチープ。

とは言え、誘いには食い気味の二つ返事で応えた。

 

お金はないが、時間だけはいくらでもある大学生の夏休みである。
即行で日程を組み、屋久島内の格安宿やレンタカーを手配し、あれやこれやしていたら、あっという間に出発の日。

大阪南港からフェリーに乗って、まずは宮崎港を目指した。

もう日が沈む頃に大型フェリーに乗り込む。

夕闇迫る空の下、甲板にみんなで出てきて缶ビールで乾杯した瞬間を今でも覚えている。

これから始まる旅への期待、高鳴る鼓動。

少し強すぎる潮風にべたつく肌、ぬるくなってしまったビールの苦み。

就職活動や未来への不安、日々のストレスもこの際だ、と大阪湾に吐き捨てて行く。

「こうして大阪湾は汚れていくんやね・・・。」

「なにそれ。けど、確かに悲しい色やね・・・。」

なんて頭の悪い話をしながらの旅の始まり。

 

二等船室で雑魚寝の夜は更けていき、翌朝、船は少し遅れながらも無事に宮崎港に着いた。

 

午前中から、容赦なく照りつける太陽。

大きなバックパックの重みを両肩に感じながら、徒歩で宮崎駅を目指す。

宮崎から鹿児島までは電車移動。名物の鶏南蛮弁当を買い特急電車に乗車。

弁当を食べながら、外の景色や会話を楽しみ、あっという間に鹿児島駅へ到着。

噴煙なのか頂上に白い雲を被った桜島がどかーんとそびえているのを眺めながら、ぼく達はまた大きな荷物を背負って港を目指した。

 

バカな男子大学生たちはこの時点で、移動の連続に飽きてきていた。

真夏の炎天下、サンダルのゴムも溶けそうな熱々のアスファルトの上をじゃんけんで負けた奴が裸足で歩くという、ただただ罰ゲームでしかない、全く意味の無いお遊びをし始めたのだ。

もうテンションが異常。思考回路がショート寸前どころか寸断されている。

夏の日差しと南国の景色がそうさせるのか、はたまた彼らの出来の悪い心根がそうさせるのか。

普通に歩くという行為にすら飽きて、何か楽しさを求めてしまうこのバカさ加減。

20歳を超えても子どもと何ら変わらない・・・。

いや、多少は自分でお金を稼ぐこともできるようになり、生半可に自立し、体力と時間だけは有り余っているのだから子どもより性質が悪いかもしれない。

でも、こういうバカなことをしたという記憶ばかりが、愉快な記憶として残っていくのもまた真であるから困ったものである。

 

 

足の裏を焼きながらも何とか鹿児島港へ着いた一行は、トッピーという高速船に乗ってわずか2時間弱で目的地である屋久島へ上陸。

港の時点で海が半端なく美しい!!透明度高いー!!

「大阪湾とは大違い!!キレイな色やね!!」

うん、そうやね。

誰も悲しみを捨ててないんでしょうよ。知らんけどな。

 

島の北側の宮之浦港から程近くのレンタカー屋さんで、8人全員が乗れるハイエースを借りて、いざ島の南側にある宿へ。

宿は、当時1泊1,600円という超格安の「平内屋」さんという素泊まり専用の民宿。
(現在はもう営業されていないご様子)

さて、この平内屋さん、島内最安宿という点が最も魅力的なポイントではあるが、実はそれだけではない。

隠された魅力的なポイント。

それは、混浴温泉に近い宿なのである。

大事なことなので、もう一度言う。

混浴温泉に近い宿なのである!!

 

この旅の最大の目的はそう!!
混・浴・温・泉!!

 

太平洋の大海原を眺めながらの!!
混・浴・温・泉!!!

 

縄文杉より何より!!
混・浴・温・泉!!!!

というわけで、宿に荷物を放り込んでワクワクドキドキの混浴温泉・湯泊温泉へ!!

ちなみに男女8名いて、カップルは1組もおりません。

この時全員フリーだったような、、、。

もしかして、何か起きちゃうんじゃない?という、邪な期待を胸に車を走らせること数分。

 

着いた先にあったのは、目隠し用の簾が申し訳程度にたらんと掛かっているだけの小屋すらない岩場。

え、脱衣所とかも何もないの?お風呂の周りで適当に脱いでくれ、と?ほうほう・・・。

・・・。

マジか・・・!?何という解放感!!

 

お風呂も海から少し離れたところにある完全な露天岩風呂で、一つの浴槽を男性用・女性用とに分けてはいるが、その区切りはただの背の低い竹垣1つ。

マジか。。すげーな。おい。

 

その上、水着着用不可とくらぁ!!
ええぇいっ!!やったんぞ!!こらぁ!!
と、半分やけっぱちで脱いで入浴。

 

背の低い竹垣越しに男女が入浴・・・。
竹垣の下からは、お姉さま方の白い足が・・・見えない。っく。。

 

ってか、実は地元民の先客の方々がおられたので、おとなしーく入ったのでした。

そしてこういうとき、男性陣よりも女性陣の方が大胆になるということを知った20歳の夏でした。

特におばあちゃんは、、、強い、、、よね。。

え、いや、、特に何があったわけじゃないんだけど、、、。うん。

 

おっと、文体が乱れてしまった。

気を取り直していこう。

 

さて、湯泊温泉は竹垣が付いているメインのお風呂だけでなく、もう少し奥に行くと海と面している湯舟もあり、男子4名はそちらへカニ歩きで移動。

ちゃっかりゴーグルも持参して、お風呂から海へ素っ裸でダイブ。

人生の中で最も解放感に満ち溢れたダイビングだった。

正に、魂のルフラン。私に還りなさいと、海が呼んでるかのような感覚。

どこまでも見渡せるような透明度、熱帯魚の群れ、そしておびただしい数のクラゲの死体。。

クラゲの死体邪魔だな。おい。

時間を忘れて、裸で遊んでいたら服を着替えた女性陣が呼びに来てくれた。

「いやん!!見ないでよね!!しずかちゃんのエッチ!!」的なね。

逆転現象的なね。うん、あるある。

 

お風呂から帰って来て、宿でごはんを作って食べて、早々に就寝。

表向きのメインイベント、「縄文杉に会いに行く!」登山の為に早寝早起きが課せられていたのだ。

 

深夜3時に起床し、外に出てみると満点の星空が広がっていた。

人生で初めて天の川をくっきりと見た瞬間でもあった。

 

何の音もなく、那由他に広がる星空。

いや、遥か彼方で輝く星たちのささやきが聞こえてきそうな、そんな星空だ。

無数の色とりどりの星が瞬き、宇宙の深さを感じる夜。

あの時の星空をもう一度見たいな、と思う。

 

4時過ぎに宿を出発し、ハイエースは細いくねくねした山道をゆっくり進む。

5時半に荒川登山口に到着。

男4+女1の5人が登山組、残りの3人は屋久島観光組だ。

 

登山組は6時ちょうどに登山開始。

平坦なトロッコ道を歩き、険しい山を登り、美しい沢で休憩したり、手すりもない細い橋をビビりながら渡ったり。

けっこう本格的な登山。

友人の靴が壊れたり、友人の膝が壊れたり、お弁当が少なかったりといったアクシデントもありつつ、それでも年間降水量日本一を誇る屋久島において雨に降られず、なかなかの好コンディションで山を登っていく。

 

道中、ウィルソン株というとてつもなくデカい切り株に出くわした。

1586年に豊臣秀吉の大阪城築城の為に切られたという逸話を残す、約14mもの胸高周囲を持つ屋久杉の切り株だ。

中は空洞になっていて、人が何人も入れるほどの広さだ。

中に入って、カメラを上に向けて撮影するとハート型に見えるポイントがあることから、撮影スポットにもなっている。

小さな祠も祀られていて、透き通った湧き水がこんこんと湧いている。

 

膝を壊した友人がその水を手で掬い上げ、「うまい!」と言いながら飲んでいた。

が、後から入ってきた別グループのガイドさんが「その水は飲まない方が良いですからねぇー。」と説明しているのを聞き、一同爆笑。

「膝だけでなく、お腹までも壊す気か。」

はっはー!誰がうまいことを言えと言った。

 

 

スタートから5時間ほど山道を歩き、全員に疲れが目立ちはじめた頃、お目当てのそれが目の前に現れた。

最も有名な屋久杉である「縄文杉」だ。

樹齢3000年以上を誇り、30mの高さ、16mもの幹周を持つ大木だ。

ゴツゴツした肌。

枝の一本一本が大木クラスの大きさ。

圧倒的な存在感だ。

そこに立っているだけで、神秘性を感じずにはいられない巨木。

 

残念なことに、観光客が周囲の地面を踏み荒らさないように柵がしてあり、縄文杉に触れることはできなかった。

観光地化すると、どこでも同じような問題が起きるものである。

これから先の数千年も変わらず、そこにあってほしい。

そのために、人によるダメージは最小限に留める措置があるのは致し方のないことである。

あーー、けど触ってみたかったなぁー縄文杉。

 

縄文杉の前でゆっくり休憩していると、森の奥からヤクシカの親子が現れた。

観光客に慣れすぎて、まったく警戒している様子を見せないヤクシカ。

キスできるような距離まで顔を近づけてきた。

マジか。間近。真鹿。

真鹿ってなんだよ。

いやー、かわいいけど、どうかと思うね。。

餌とかあげちゃう人がいるんだろうな。

もっと野生全開でいてほしいと思ってしまうのは人間のエゴなのか、な。

 

 

さて、縄文杉を後にして、登ってきた道をそのまま帰るのかと思ったら大間違いだ。

 

ここから我々は、もののけの森を目指す。

ジブリの傑作、「もののけ姫」に出てくる森のモチーフとなった「白谷雲水渓」だ。

緑の苔で覆われた岩々、流れる清流、清浄の地。

そこの空気を吸うまでは死ねない。

 

笑う膝を騙し騙し何とか下山していき、トロッコ道まで戻ってきた。

途中の分岐を来た道とは違う方へ折れ、白谷雲水渓を目指す。

 

また登りだ。ここまで来ての登りは相当ツライ。

そして植生や地面の質が変わった。土から砂地?っぽくなっている。

その上、巨岩があちこちに転がっている。

 

途中、岩屋を発見。

「あれ、これって、モロとアシタカが話していたあの岩屋?」

そこが本当にモチーフになったのか定かではないが、こうした出逢いがテンションを上げてくれる。

 

あと、疲れを癒してくれたのが水だ。

飲んでも良さげな水場の水を飲むと、信じられないくらい美味しい。

森の味がするというのが正しいか分からないが、何かとても清らかな味のある水だったのだ。

 

そうこうしながら何とかこまめに回復をしながら歩いていると、広い場所に出た。

ベンチなども用意されていて、休んでいる人たちもいた。

そして一枚の立て看板を発見する。

 

「太鼓岩コース案内」とある。

 

友人曰く「もののけ姫でいのしし達が特攻して爆破されるシーンの白い山?丘?岩?」とのこと。

 

「これは行くしかないだろう派」と、「もう無理派」に分かれる。

 

おいおい、マジか。

ここまで来て行かないなんて選択肢があるのかよ、と思っていたら、ベンチで休憩していた方から「太鼓岩は絶対行った方が良いよ」とおすすめされた。

 

ありがとう、おじさん!!

山は人の距離を近づけてくれる。

東京で、東京タワー登る登らない論争をしていても、絶対このおじさんのように「東京タワーは絶対登った方が良いよ」なんて言ってくれないだろう。

まぁ、スカイツリーの方が高いしねぇ。

って、そういう問題じゃなくてね?

 

あ、、、けど大阪の新世界で通天閣登る登らない論争だと、「兄ちゃんら、通天閣登っとかな損すんでー!」とか言われそうだな。。

じゃなくて、今はそんなことはどうだって良い。

 

とにかく、おじさんのその一言でぼくたち5人は、太鼓岩を登ることにした。

さて、ここでこの記事の冒頭に戻るわけだ。

 

「ユワッシャッー!!愛で空が落ちてくるー!!ユワッシャー!!俺の胸に落ちてくるー!!熱い心 鎖で繋いでも今は無駄だよ!邪魔するやーつは指先ひとつでダウンさぁぁぁー!!」

キツイ勾配の、緑が鬱蒼と茂る山道をすでに汗だく、どろどろ、疲労困憊のぼくたちは気力を絞って登っていく。

ちなみに「愛をとりもどせ!!」の歌詞の「ユワッシャー!!」の部分。
正しくは・・・以下略。

 

で、もうみんなヒィヒィ言いながら登り切った先には、とんでもなく素晴らしい景色が待ち構えていると思うだろ?

いや、素晴らしい景色はあったんだけど、その景色の前に、ぼくたちの目の前に現れたのは結構な人数の先客の方々だ。

 

みんなこっちを見てる。。。

 

視線が刺さる。。

 

そりゃそうだ。。。

 

そこそこ若者の声で

「ユワッシャッー!!愛で空が落ちてくるー!!ユワッシャー!!俺の胸に落ちてくるー!!熱い心 鎖で繋いでも今は無駄だよ!邪魔するやーつは指先ひとつでダウンさぁぁぁー!!」

と、半狂乱のような叫び声で合唱されて近づいてくるんだから。

ちなみに続きの

「おーれとの愛を守るためー!おーまえはたーびだーちー!あしーたをー見失ったぁぁーー!!」

も、超ハイトーンで歌ってるからね。

明日どころか、今すら見失いかけてんだろうよ。ねぇ?

 

もちろん最後まで歌うよ?

「ほーほえみ忘れた顔などー!みーたくはないさぁー!!」

あぁ、そうさ、見たくなかったぜ。

初対面の方々の苦笑にまみれたあんな顔はよ。。。

 

「あーーーいを、取り戻せぇえぇーーーー!!」

取り戻したいのは愛じゃない!!

太鼓岩の上にいた方達からの信用的な?うーん何だ?何というか、その、社会的な何かだ!!

 

 

まぁ、上にいた方々がいだいた感情は、恐怖以外の何ものでもなかっただろう。。

ヤベー奴らが登ってくるぞ!逃げ場がない!!的なね。

 

・・・本当にごめんなさい。

 

バカな大学生が気力を振り絞って登ってきたんです。

 

許してください。

 

お願いします。。。涙。。。

 

 

さて、そんなこんなで登ってきた太鼓岩だが、そこからの景色はまさに絶景。

深い谷間にせり出た岩の先まで進んでみると、気分はもう大空を舞う鳥だ。

屋久島の雄大な緑の山々を見渡し、青い空を仰ぎ、遠くに海も望む。

時折吹く風に身を預け、ここから飛び立ってみたくなる。

柵や命綱的なものも何も用意されていない崖の上。

そっと一歩踏み出し、身を投げるだけであの世行きが確定する。

生と死の距離がとても近い、非日常的な景色が望める場所、太鼓岩。

自然と涙がこぼれた。

 

その後、無事に白谷雲水渓にもたどり着き、苔むす一面緑色の清浄な世界に入り込み、素晴らしい自然を堪能した。

写真を撮る度に白い半透明な球体(オーブ?)が写り込み、

「これってコダマかなぁ?」

なんて言ってみんなで笑いあった。

 

屋久島観光組に下山した場所にまで迎えに来てもらい、計10時間半に及ぶ屋久島登山は無事に終わりを迎えた。

誰一人脱落することなく、最高の景色を共有し、最高の時間を共にした旅路だった。

 

観光組が、この登山の間にお店で車をぶつけてテールランプを破損していたことや、この旅の間に一組のカップルが誕生しそうになっていたのはまた別のお話。

 

またいつか、屋久島に行きたいな。

 

おしまい。