「青い海風だけが知っている。」(こずえドライブに寄せて)

「青い海風だけが知っている。」(こずえドライブに寄せて)

どうも!やーさんです。

2019/5/9スタートの3000文字チャレンジ「趣味」でこずえさんが、めちゃくちゃ良い記事を出してこられました。

 

自身の趣味であるドライブをテーマに、飲みながら自分を解放して書いたという

「妄想ドライブデート」!!

この記事を読んで、ぼくはめちゃくちゃニヤニヤしてしまったわけですww

マジでみなさんも一回読んでくださいね!!

大人な乙女のキュンキュンドライブデートです!

 

で、ぼくはTwitter上でこんなコメントを残しました。テンション超高いですwww

 

すると、こずえさんからこう返ってきました。

 

 

おいおい。ちょ待てよ。

こんなほめ方されたら書くしかないじゃないか、と。

(嬉しい褒め言葉はお世辞だろうが何だろうが、全力で自分の物にしていくスタイルです。笑)

 

ということで、こずえさんの記事「私と一緒にドライブへ行こうよ。」(通称「こずえドライブ」)からの派生作品「青い海風だけが知っている」(通称「やーさんドライブ」)を書いてみようと思います笑

 

レッツ妄想ドライブ!!

 

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快晴の五月初旬。空気はどこまでも澄んで、蒼い空が広がっている。

ここは山口県下関市のある駅に近い、国道沿いのコンビニエンスストア。

今日は、彼女とドライブデートの日だ。

集合時刻の5分前。

すでに彼女はコンビニの駐車場に車を止めて待っていてくれた。

黒い軽自動車のフロントガラスを挟んで手を振りあう。

遠慮がちに手を振る彼女の仕草が何とも愛らしい。

 

 

「おはよう、とりあえず何か買ってから行こっか。」

運転席から降りて彼女が言い、店内へ入って行く。

彼女は早々に、柑橘系の果物の描かれたガムを手に取りレジに向かい、店内ドリップのホットコーヒーを買った。

 

何を買おうかなと数瞬迷ったが、昨日読んだ村上春樹の本に出てきたサンドイッチが脳裏に浮かび、俺はサンドイッチとホットコーヒーを買った。

 

「お待たせ。」

車に乗らず、運転席ドアのそばで待ってくれていた彼女に声を掛ける。

「じゃぁ、行こっか。」

いつもより少しだけ彼女の声が弾んでいるように思う。

ドライブが好きだって言ってたし、楽しそうにしている姿を見るのはこちらも気分が良いものだ。

 

車の助手席に乗り込む。

ジャラジャラとした装飾などもなく、シンプルな車内。

普段の服装からして、飾り立てることをあまり好まない「彼女らしい」空間だと感じた。

今日は彼女の運転メインでのドライブデートだ。

ご自慢のドライビングテクニックのお手並み拝見といこうじゃないか。

 

スタートボタンが押され、エンジンがかかる。

軽自動車ならではの、軽めの始動音。

 

シートベルトを締める時に顔が近づくのを利用して、彼女の目を見つめてみる。

どんな反応が返ってくるのか。

・・・瞬間目が合った気がしたが、彼女は何も言わずにカーオーディオを操作し始めた。

おっと、、、肩透かしくらっちゃったかな。。

 

少しだけやるせない気持ちが胸を過ぎったが、そんな気持ちも次の瞬間どこかへ飛んで行った。

心を躍らせるイントロが流れる。

「おっ、いいねぇ~。懐かしい!」

気付けばそんな言葉が口をついて出ていた。

同時に車は滑り出すように動き出した。

 

流れてきた曲はB’zの「BLOWIN’」。

 

これが1曲目に来るということは、ベストアルバム「Treasure」か。昔よく聴いていたな。

B’zの魅力が溢れる、相当ご機嫌なチューンだ。

稲葉のハイトーンボイスが耳に心地いい。

 

彼女の音楽のチョイスは素晴らしい。楽しいドライブになりそうだ。

 

車は、雲一つない青空の下をどこまでも真っ直ぐに進んで行く。

2曲目は大好きな「恋心(KOI-GOKORO)」。

これも青春時代によく聞いた思い出の歌だ。

“忘れない 恋心 いつまでも 恋心”

ついつい身体がリズムを刻んでしまう。

 

「稲葉さんって数学教師の免許持ってるんだよねー。」「俺、数学苦手だったわー。」なんて他愛ない話をしながら、二人を乗せた車は軽快に国道2号線を進んでいく。

 

5月の桜並木に花の姿はなかったけれど、生命力を感じる若い青葉が陽の光を浴びて輝いていた。

 

BGMが3曲目の「TIME」にさしかかる頃、大きな緩やかなカーブを超え、海が見え始める。

少し開けている窓からは、軽やかな潮風の香りが流れ込んできた。

 

「ここ、昔小さな遊園地だったよね、覚えてる?」

「懐かしいね。冬のスケート場に毎年来てたよ。」

「えっ?じゃあ、どこかで会ってたのかも知れないね。」

 

同じ風景を見てきた同世代の二人。

懐かしい思い出話は、心の色んな引出を開ける鍵となる。

 

”どうすれば 時が戻る 今どこで 何をしている”

 

何かに縋るような切ない歌声に乗せて、そんな歌詞が流れた瞬間ふと訪れた沈黙。

 

自分の中で戻りたい時があるのか、今どこで何をしているか気になる人はいるのか。

軽く自問自答してみる。

自分の中に、想いを強く置いてきた過去が無いわけではないが、どれもある程度は整理して過去に置いてきた感情たちだ。

それよりも、今この瞬間にこそ幸せを感じているということを運転席の彼女に伝えよう。

 

そう思い右を見ると、彼女のまなざしはわずかな憂いを含みながら真っ直ぐに前を向いていた。

彼女の瞳に映るのはひたすらに青い世界。

白いキャンパスにいくつもの青いインクを静かに静かに流し込んで描かれたような、空の青と海の青。

 

美しい彼女の横顔と、今ではないどこかに想いを巡らせているような瞳の色に、俺は開きかけた口を閉じた。

 

少しの間、その横顔に見蕩れていた。

そんな俺の視線に気付かない彼女だったが、ある瞬間にふっと表情が和らぎ、僅かに唇が動いた。

「·····きれい·····。」

声にならないような声が聞こえた。

彼女の瞳の先に、関門海峡の美しい景色が広がっていた。

 

 

関門橋が見え始める頃、ある曲のイントロで二人のテンションは上がった。

「Preasure’98~人生の快楽~」

エレキギターで奏でられる疾走感のあるリフが、二人の鼓動を早める。

 

”いつの間にかこの街に丸め込まれたのは僕”

サビを二人で口ずさみ、そして笑う。

好きな人と好きな歌を共有したり、笑い合えたりするということがこんなにも幸せなことだったのかと改めて気付かされる。

 

 

”あいつもとうとうひとりになった月曜日の夜”

Bメロの歌詞を聞きながら、そうか、この曲の”あいつ”も色々あったんだなぁなんてことを考える。

B’zの「Preasure’」は歌われる年代によって歌詞が変わる曲だ。

 

「Preasure’91」では”とうとう親父になったあいつ土曜日の夜”

「Preasure’95」では“あいつもとうとう親父になって5年が過ぎて”

そして、今流れている「Preasure’98」では”あいつもとうとうひとり”になっている。

 

俺も彼女も、人生の色んな変化を経験してきた。

若かりし日の過去の自分たちのように、人生の経歴書は真っ新な状態ではない。

歪なキズが付いてたり、涙の痕がにじんでいたりする。

けれど、そのキズは人生の誇りだとも言える。

そんな、お互いの凸凹なキズを合わせてぴったりと嵌まるのであれば、それはそれで良いんじゃないかなんてことをぼんやりと考える。

 

”怖いものはありますか 守るものはありますか”

”止まれないこの世界で 胸を張って生きるしかない”

 

曲の最後の歌詞が胸に響いた。彼女の心に、この歌はどう響いているのだろうか。

 

イントロの激しい印象とは反対に、切なさを感じさせるピアノで奏でられるアウトロが流れている車内。

少しお腹も空いてきた。

コンビニで買っておいたサンドイッチを開けて、タマゴサンドの部分を一口大にちぎる。

 

コーヒーに口をつけながら、一息ついた彼女に「はい。」と差し出すと、彼女は「えっ・・」と少し驚きつつも、小さな口を遠慮がちに開けた。

 

「おいしい?」と訊くと「・・うん。」と少し照れたように返してくる。

 

その反応がかわいくてつい笑ってしまう。

お互いの年齢を考えると、そんな初々しいシチュエーションが可笑しくも思えてくるが、かわいいと思ってしまうものはしょうがない。

 

胸の中に芽生えた愛しさは、どんどんと加速して成長しているようだった。

 

そんな恋心と反比例するように、車のスピードは少しずつ落ちていた。

海の見える広い道はすでに通り過ぎ、市街地のビル群に差し掛かっていた。

幾度目かの赤信号に車を止めた時、彼女の左手がスッとひじ掛けに降りてきた。

 

ふと目に入った爪には、控え目な淡い色のマニキュア。

普段はマニキュアなんか塗らない彼女のことだ。

きっと今日の為に塗ってきてくれたんだろう。

 

彼女に対する愛しさの加速度に押されるようにして、俺は彼女の左手に自分の右手を重ねた。

 

ビクッと震えた小さな手は、それでも拒否することなく、俺を受け入れてくれている。

それが嬉しくて、さらに指を絡めてみる。

 

頑なに顔をこっちに向けることなく、少し泳いでいる目がまたかわいい。

そんな態度を見ると、少しいじわるしたくなってしまうのが男の性だ。

 

「これから、どこ行こうか…?」

「ぇぇぇ…。どうしよう…。」しどろもどろで答える彼女につい笑ってしまう。

 

そんな彼女に対して俺はこう答えた。

「じゃあ、海が見たいな。関門海峡じゃなくて、今度は山陰の海。」と。

 

二人のステージが次に移行することを表すように、カーステレオから流れるBGMも次のフォルダに移る。

流れ出したのは、B’zのもうひとつのベストアルバム「Pleasure」。

「love me, I love you」のメロディに乗せて、二人を乗せた車は国道バイパスの上り坂を駆け上っていった。

 

 

下関の市街地から1時間強ひたすら下道を走り、繋いだ手にぎこちなさを感じなくなった頃、辿り着いたのが山口県の北西端にして絶景で知られる場所「角島」だ。

エメラルドグリーンに囲まれた、全長1780mを誇る角島大橋を渡る。

 

 

ここが日本だということを忘れてしまいそうになるような、絶景のオーシャンビュー。

正に恋人たちの聖地とも言えるような、二人の距離をさらに縮めてくれる素敵な風景が広がっていた。

 

車を停めて、外に出て、縮こまった足や背中を伸ばすように背伸びをする。

穏やかな日差し、気持ちの良い海風、山の緑に海の青、隣には笑顔の彼女。

これ以上に幸せなことがあるだろうか。

 

すっと手を差し出してみる。

繋がれる手に戸惑いはもうない。

手を繋いだまま少し歩く。

人影もほとんどなく、二人だけの静かな時間が刻まれる。

 

 

建物の影に入った時、どちらからともなく一瞬目が合った。

 

 

今回は逃がさない。

 

 

優しく引き寄せ、彼女の頬に手を伸ばす。

 

 

心臓の音がやけに大きく感じる。

 

 

もう二人の間に言葉はいらない。

 

 

目を閉じ、刹那、重なる唇。

 

 

柑橘系の甘くほろ苦い香りが二人を包んだ。

 

 

唇の凹凸を重ねただけのまるで子どものような、優しい口づけ。

 

 

「・・・・・・・・・。」

「・・・・。」

 

 

離れた唇から紡がれたのは、二人だけの、秘密の愛言葉。

 

 

流れゆく青い海風だけが、そんな二人の愛言葉を聞いていた。

 

 

おしまい。

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