【3000文字チャレンジ】沈香も焚かず屁もひらずな男にはなりたくない。そんな男の趣味の話

【3000文字チャレンジ】沈香も焚かず屁もひらずな男にはなりたくない。そんな男の趣味の話

3000文字チャレンジ!! お題:「趣味」
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「沈香も焚かず屁もひらず」

こんなことわざをご存知でしょうか。

意味としては「役にも立たないが害にもならないこと、よい事もしないが悪い事もしないこと、可もなく不可もなく平々凡々であること」といったことの例えとして使われます。

 

例文:彼は沈香も焚かず屁もひらないような男だな。

意:彼は別にこれといって悪いところもないけれども、これといって良いところもないな。全くつまらん男だ。

 

という感じで使われる言葉です。

 

個性がない。毒にも薬にもならない。付き合う対象としてつまらない。
いやはや、、、なかなかキツイ言われようですよね。

 

もうちょっと広く深く見て、その人の良いところ探してあげてもよろしいんじゃなくて?
と、フォローしてあげたくなるような、そんなけっこう攻撃力の強い言葉だと感じます。

 

さて、このことわざに出てくる単語で名詞が2つありますね。

「沈香」と「屁」。

 

「屁」の方はもうそのまま、お尻から出ちゃうおならのことです。

腸内で発生したガスを含んだ気体。

最も身近な悪臭の一つですね。

 

もう一つの「沈香」

今回の記事の本題はこちら。知らない方もけっこうおられるかもしれません。

読み方は「じんこう」です。「沈」なので「ぢんこう」の方が読み仮名としては正しいのかもしれません。
いずれにしても「ち○こ」ではないので読み方にはご注意を。

 

で、この「沈香」とはなんぞや?という話ですよ。

この沈香という物の正式名称は「沈水香木(じんすいこうぼく)」です。

香木と呼ばれる、香りの原料となる物の一種ですね。

ことわざの中ではおならと対比して、とても高貴で良い香りがする物として取り上げられています。

 

木という文字が入ることから分かるように植物性のもので、木の繊維質部分に芳香成分を含んだ樹脂が溜まった状態の物を指します。

日本では育たない東南アジア一帯(インドネシアやベトナムなど)で産出する、沈丁花科の樹木内に偶発的に樹脂が発生する物で、100年以上の非常に長い時間をかけて作り出される自然界の宝物として古来より珍重されてきました。

木自体は非常に質量が小さく水にぷかぷかと浮きますが、樹脂が十分に溜まった物は水に浸けると沈みます。このことから「沈水香木」と呼ばれています。

 

よく使われるシーンをあげると、寺院での法要の際などに使われます。

香炉に熾した炭を入れて、その上に沈香そのものや、沈香をベースに調合された焼香を焚いて香りを広げます。その他にも高級なお線香の主原料としても使われます。

ある程度品揃えのある百貨店の仏具売場や、町の仏具店さん、お香屋さんなどに行くと多種多様の沈香の香りの線香やお香が販売されていますよ。

 

 

ぼくの趣味の中で、特異なものを一つ挙げるとすると、この沈香の香りを聞く(=嗅ぐ)こと。

個人的に沈香の香りはとても癒される落ち着いた香りで、歴史的にも文化的にも奥深く、とてもロマン溢れるものだと感じています。

 

もう少し、この沈香に関して説明をさせてください。

(歴史の勉強みたいで眠くなっちゃったらごめんなさい。)

 

もともと、日本から遠く離れた異国の地よりもたらされたこの「沈香」。

歴史を紐解いてみると、仏教伝来(AD538年)と共に日本にもたらされたようです。

異国の地より渡って来られた仏様への「御供のお香」として使われた沈香の香り。

それまで日本人が感じたことのない香りの広がりと共に、大陸からもたらされた仏教も広まっていったのだろうなぁと想像が膨らみますね。

 

沈香に関しての最古の記録が記載されているのが「日本書紀」です。

その中では以下のように書かれています。

 

推古天皇3年(AD595年)4月のこと。

淡路島に2mもの大きな流木が流れ着いて、その木を島民がかまどにくべて燃やすと普通の木とは異なるとても良い薫りがしたのだと言います。

島民たちは「これは変わった物だ!」ということで、時の朝廷にその木を献上しました。

朝廷において、その木を「沈香という香木である」と鑑定したのが、かの有名な聖徳太子であったとされています。

 

聖徳太子は日本の中枢にて、仏教を熱心に広めようとしていた人物でもありますから、538年の仏教伝来の頃より宗教儀式の中で使われていたであろう沈香や、その他の様々な香りに関しての知識もたくさん持ち合わせていたであろうことが読み解けます。

(けれど、詳しく読んでみると聖徳太子は植物学的には間違った見解を述べているようです。これもまたおもしろい。)

 

 

最初は宗教儀式の中で使われるものだった沈香も、その後時代ごとに使われ方が変わっていきます。

平安の貴族文化が花開いた時代には、沈香や白檀、その他丁字や甘松、麝香などといった香原料を粉末にして梅肉や甘葛などで練って小さな黒い丸薬状に仕上げられ、香炉で間接的な熱を与えて焚かれる「薫物(たきもの)」が流行りました。

この薫物の元となる製法は、何度もの苦難を乗り越え失明しながらも754年に日本へ渡ってこられた鑑真和上が伝えたとされています。

 

この薫物文化は非常に優雅で、その香りはとても複合的で雅やかな香りが漂います。

平安時代の貴族たちは自身の調合で作った香を着物や空間に焚き染め、香りだけで今そこに誰が居たか分かる、といった使われ方をされていたようです。

電気もない時代、例えば夜の闇の中で香りだけが漂っていて、その人の存在を感じる。

何だかとてもステキなことに思えませんか?

 

平安時代の有名な物語といえば、源氏物語ですが、その源氏物語の中にもたくさん薫物の話が出てきます。

特に32帖「梅枝」では、明石の姫君の裳着に合わせて光源氏と女君たちが薫物を熱心に作り上げ、蛍兵部卿宮を判者に迎えて、それぞれの自信作を焚き比べ優劣を判断する「薫物合わせ」のシーンが細かく描かれます。

 

大切な方の為に、心づくしの最高品質の材料を用意し、自分が持ちうる教養を最大限に発揮して「香り」を作り上げる。

人の思いやりや愛情を感じ、とても雅やかな香りがいくつもいくつも漂ってくるこの「梅枝」の帖がぼくは大好きです。

 

現在でも茶道の中では炉の時期に使われますし、お香専門店に行けば「練香」として様々な種類の商品が置かれていますので、興味のある方はぜひ一度お試しください。

 

 

時代は流れ、平安時代の貴族社会は衰退し、代わって武家が台頭してきます。

武家社会では、上記のような雅やかな薫物の香りよりも、沈香単体の静謐な香りが好まれるようになります。

沈香の香りには鎮静効果があり、この香りを兜の中に焚き染めるなどして心を落ち着けて戦場へ赴いていたという記録も残っているそうです。

 

そして、室町幕府8代目将軍足利義政の時代、いわゆる東山文化のころ。

京都の銀閣寺の中で、沈香の香りを鑑賞するための芸道=「香道」が生まれます。

 

茶道・華道は有名ですが、日本には香の道「香道」なるものがあることを、ご存じでしょうか?

ぼくも別に香道を習っているわけではないので、詳しくは分からないのですが、一定の作法に沿って沈香をはじめとする香木の小さな欠片を香炉の中で焚きあげ、その香りを鑑賞する芸道になります。

 

香道において、香は「嗅ぐ」ではなく「聞く」と表現されるそうです。

 

「香りを聞く」。

 

とても響きが良い言葉だと感じます。

この香を聞くということを「聞香(もんこう)」と言います。

 

ぼくはごくたまーーーーにですが、自分の時間が持てる時にこの聞香の真似事をして遊んでいます。

聞香の手順は以下のような感じ。

 

・手の平に収まるサイズの聞香炉と呼ばれる香炉に灰を入れ、よく熾った炭を中心に埋めます。

・香道具の火箸で、灰をかきあげ、炭に灰をかぶせておおまかな山を作ります。

・次に「へら」のような形をした「灰押さえ」という道具を使い、山をきれいな形に整えていきます。

・出来上がった灰の山の頂点から火箸で穴を空けて、炭の熱を通します。

・その穴の上に「銀葉(ぎんよう)」という雲母で出来たプレートを乗せ、さらにその上に2~3mmの小さな欠片に切った香木を乗せます。

・香炉を左手の上に置き、右手でフタをするように持って、香木から立ち上る香りを鑑賞します。

 

 

本来はもっと様々な道具を用意し、手順を踏んで、貴重な香木の香りを焚きあげていくそうですが、個人で楽しむ分にはこれで十分だと思います。

 

香木の産地ごとに香りの特徴が少しずつ異なるので、それらを聞き分けるのも楽しいですよ。

 

また、その香りの違いを使って、複数種の香木の香りを複数回聞いて、どれとどれが同じ香りだったかを当てるといった、ある種ゲームのような「組香(くみこう)」と呼ばれる遊びが香道の席では楽しめるそうです。

お香専門店などでは体験会もされているようなので、興味のある方は調べてみてください。

 

ぼくも源氏香という組香を体験したことがありますが、それは5回香りを聞いて、どれがどれと一緒だったかを52通りの組み合わせから選ぶという、非常に優雅な遊びでしたよ。(当てるのはとても難しいですが)

 

香炉の中の一片の香木から立ち昇る香りは、何物にも例えがたく、言葉では言い表せないとても深い香りです。

数百年の時を経て、遠い異国の地から自身の手元まで届いた香木の香りは、一度焚いてしまうとそれで終わりです。

有限でいて幽玄な香り。ぼくはこの香木の香りにとても魅力を感じ、惹き込まれてしまうのです。

 

このように、非常に古くより日本の香り文化の象徴的存在として沈香というものがあるわけですが、現在は枯渇資源としてワシントン条約でも規制されており、とても貴重で高価な物となっています。

 

沈香の価格はその質によりピンキリではありますが、1g数千円するものもあります。

沈香の最高級品である伽羅(きゃら)という香木になると、1g数万円となります。。そんな高価な物まではなかなか手が出ないですよね(汗)

ただ、この伽羅はもうとんでもなく素晴らしい香りです。

日本の香り文化の最高峰の香りといっても過言ではないですよ。

 

ということで、今回はぼくの「趣味」である香木「沈香」のお話でした。

文字だけでどこまで伝わるか不安ですが(笑)

興味を持たれた方は、Twitter上でお話しましょうね。

 

 

それでは!

沈香も焚くし、屁も出しちゃう男がお届けしました笑

 

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あとがき

どうも、やーさん(@ohokamudumi)です。

Twitter上で企画されている3000文字チャレンジへの挑戦です!!

 

今回は趣味ということで、好きな和の香文化や香木「沈香」に関してのびのびと書いてみました。

他にも趣味はありますが、これが一番マイナーで3000文字チャレンジャーの誰とも被らないと思った次第です笑

ちょっとマイナー過ぎて伝わらないのではないかと心配な部分もありますが、ぼくが好きなモノやコトに少しでも興味を持っていただければ幸いです。

 

さて3000文字チャレンジセカンドステージ!!

今回は参加者のみなさん、どんな「趣味」を書かれるのでしょうか。

 

 

この記事を偶然見てくださったあなた!!

すぐにTwitterで「#3000文字趣味」「#3000文字チャレンジ」などで検索して読んでみてくださいね!!

きっとたくさんのおもしろい話に出会うことができますよ!!

 

書くのも読むのも楽しい3000文字チャレンジ!あなたも参加してみませんか?

 

 




 

やーさん

最後までお読みいただきありがとうございました!

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