【3000文字チャレンジ】言の葉の庭の「先生・・・でしょ?」は切なすぎるよね。ってお話。

【3000文字チャレンジ】言の葉の庭の「先生・・・でしょ?」は切なすぎるよね。ってお話。
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3000文字チャレンジ! お題「せんせい」

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数か月前、図書館である本を借りて読みました。

敬愛する万葉学者である上野誠先生の著書「入門 万葉集」(ちくまプリマー新書、2019年)という本でした。

内容は中高生向きに書かれた本で、「万葉集は、古代人のSNSです」というテーマで、日本最古の歌集の成り立ちや、時代、人物や場所について分かりやすく解説されていて、とても読みやすく万葉集のおもしろさがよく感じられる本でした。

 

その本のはじめの方で上野先生が海外で万葉集の講演をした際に、参加者の方の多くから新海誠監督のアニメーション作品「言の葉の庭」について聞かれた、というエピソードが紹介されていました。

「言の葉の庭」の作中では、万葉集の中から取られた和歌がキーワード的に出てくるということを、そこで初めて知ったそうです。

上野先生は講演会後に「言の葉の庭」を見て、とても良い映画だったと評価されていました。

 

 

上野先生のその評価を見て、「へぇー万葉集が使われてる映画なんだー。」と興味をもったぼくはさっそくDVDをレンタルしてきて見てみました。「言の葉の庭」。

 

 

それまで、新海誠作品は大ヒット映画「君の名は。」しか観たことなかったんです。

そういや「君の名は。」の序盤にも、学校の授業風景の中で和歌が出てきてましたね。

 

女性教師が黒板に板書するシーン。

「誰そ彼と われをな問ひそ 九月(ながつき)の 露に濡れつつ 君待つ我そ」

黒板に上記の和歌が書かれています。

現代語訳すると「誰だろうかと私のことを問わないでください。九月の雨に濡れながら君を待つ私なのです。」という万葉集にある作者不詳の歌です。

 

黄昏時の「黄昏」は「誰そ彼」が語源であり、もっと古くは「彼誰そ(時)」や「彼は誰(時)」とも言った、というセリフがあり、このシーンは「彼は誰だ?」つまり「君の名は?」と変換できて、この作品を象徴するものにもなっています。

 

「君の名は。」の新海監督へのインタビュー記事を読むと、物語の「発想」に関して、小野小町の

『思ひつつ 寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを』

(訳:あの人のことを思いながら眠りについたから夢に出てきたのであろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかったものを。)

という和歌を引っ掛かりとしてこの作品を作り上げていったということも書いてありました。

まさかあの大ヒット作が、古の和歌から着想を得ていたとは驚きでした。

 

 

さてさて、話を戻しまして「言の葉の庭」です。

この作品は「君の名は。」の一つ前の作品なんですね。

随所に「君の名は。」を彷彿とさせる(本来の時間軸的には逆)描写が見られます。

 

(ここからは盛大にネタバレを含みつつのお話になるので、「言の葉の庭」をまだ見ていなくて、内容を知りたくない!!って方はご遠慮いただければと思います。別にネタバレされても良いよ!とか見たことあるある!って方はどうぞお付き合いいただければ嬉しく思います。)

 

「言の葉の庭」は2013年に公開された新海監督の5つ目の作品で、約46分のアニメーション映画です。

キャッチコピーは「”愛”よりも昔、”孤悲”のものがたり」。

”孤悲”は恋のことですね。

 

まだ文字が無く、話し言葉だけがあった昔。

当時の日本人たちは大和言葉と呼ばれる自分たちの言葉に、大陸から持ち込まれた漢字を次々と当てはめていきました。

たとえば、今で言う「春」は「波流」と表記されました。

万葉集の歌の数々も今でこそ漢字と平仮名に置き換えられて、分かりやすくなっていますが、もともとは全て漢字で表記されているんですね。

 

そして「恋」に充てられた漢字は「孤悲」だったそうです。

孤独に悲しい。

なんていう切ない響き・・・。

もうこの時点で、この作品は切ない恋の物語であることが予感させられます。

 

 

物語の始まりは、雨音と鳥のさえずる声。

実写かな?と思うほどに美しい風景が流れます。

新緑を反射した翠色の水面に、雨粒がしとしとと落ちて波紋を作っています。

その水面すれすれまで枝葉を伸ばした青もみじ。

 

五月雨は緑色。

そんな歌い出しで始まる恋の歌があったことを思い出します。

 

この物語の主人公は高校一年生のタカオくん。

高校に入学してから2か月しか経ってないけれど、高校に通う意味をあまり見出せなくて、自分の夢である靴職人になるために日夜せっせと靴作りをしている男子学生です。

短髪でキリリとした顔立ちのイケメン!その上、料理までお上手!!

母と兄の3人で都市近郊に住んでいる様子です。

兄はまもなく彼女と同棲するために家を出るようで、それを聞いた母は拗ねてしまって一回り年下の彼氏宅へ家出中・・・何だか困ったお母さんですこと。

けど、彼が靴職人を目指したきっかけは、昔小さい頃に父と兄と自分の三人からプレゼントしたキラキラのハイヒールを母がとても喜んでくれたからだったってんだから、泣かせるじゃないの。ねぇ。

 

そんなタカオくん、雨が降った日は午前中は学校をサボり、新宿駅で乗り換えるはずの地下鉄に乗らずにそのまま新宿御苑の東屋で靴のデッサンなんかをしています。

 

 

ある雨の日、その東屋でタカオは一人の女性と出会います。

ショートカットの美しい女性。

その女性は、今から仕事ですって感じのしっかりした服装をしているのに、朝から外でビールを飲み、しかもツマミはチョコレートというなかなか怪しい雰囲気を漂わせています。

とは言え、酔って何か言うわけでもなく、ただ静かに、雨音と同じように静かにそこに居るだけ。

 

タカオはこの女性とどこかで会ったことがあるような気がして、「どこかでお会いしましたっけ?」と声を掛けますが、彼女からの返事は「えっ?・・・いいえ。」

「すいません、人違いです。」

「いいえ。」と短いやり取りのあと、遠くで雷のなる音が聞こえます。

 

その女性は、ビールを飲みながらタカオが来ているベストにある校章を見つけ、ハッとなります。

「会ってるかも・・。」

「えっ?」

 

そして、立ち上がりカバンを持ってこう続けます。

「なるかみの すこしとよみて さしくもり あめもふらんか きみをとどめん」

 

そのまま雨の中を赤い傘を差してスタスタと、振り返ることもなく歩いていってしまいました。

 

映画開始から5分で、和歌が出てきました。

わお!とってもスピーディーな展開!!

いきなりこんな和歌を諳んじられても、何のこっちゃワケわかめですよね。

 

この後、和歌に関しては触れられずにストーリーは進み、関東地方は梅雨入りとなり、幾度となく雨の午前中にタカオと女性は東屋で会うことになります。

お互いに名前も知らず、約束も無い逢瀬。

 

徐々にお互いの距離が縮まり、タカオが自身の夢は靴職人であることを打ち明けたり、一緒にお弁当を食べたり。

ある日、女性はタカオに一冊の本をプレゼントします。高価な靴の本を、お弁当のお礼だと言って。

喜ぶタカオは、靴作りが行き詰っていると話し、彼女の足に触れ採寸をします。

近づく距離感。和やかな男女間の睦まじさを感じさせる一方で、少しずつ明らかになってくるのが女性の抱いた闇の部分でした。

 

「私ね、うまく歩けなくなっちゃったの。いつの間にか。」

 

彼女はなぜ仕事に行く格好でサボり、チョコレートとビールを飲んでいるのか。

彼女の作ったお弁当の卵焼きは、なぜ味がおかしかったのか。

 

彼女は仕事場でのストレスで、味覚障害を患っていたことが分かります。

 

そして彼女の仕事は高校教師。

名前はユキノ(雪野百香里)。

タカオの通う高校の古典の先生でした。

 

梅雨明けした夏の関東には雨も降らず、二人はずっと会えない日が続いていましたが、偶然校内ですれ違います。

ユキノは退職の手続きの為に学校に来ていたのでした。

 

タカオのクラスの古典は別の教師が担当していたために、タカオは直接授業を受けることもなく、どこかでユキノの顔を見た程度の記憶しかなかったんですね。

 

彼女が高校に出勤できなくなるほどのストレスを抱えてしまった原因は、3年生の女子が逆恨みの嫉妬心からクラスを巻き込んでユキノに嫌がらせをしたからでした。

 

あーーー、何かこういう感じのこと高校時代にあったような気が・・・・女子高生って怖い。。。

こういう噂ってすぐに流れて全校生徒レベルで知ってるような話ですが、タカオは靴職人への道に邁進していて、高校内で起きる物事には全て無関心だったのでしょう。

 

友人たちからユキノ先生退職の裏事情を聞いたタカオは静かな怒りを燃やし、放課後に3年の教室に乗り込んで該当のギャルっぽい女子生徒にビンタをお見舞いするのですが、取り巻きのゴツイ男子生徒にボコボコに返り討ちにされてしまいました。

(ってかアイザワショーコ!貴様!ユキノちゃんを淫乱ババァ呼ばわりするなんて許せない!!ムキーー!!)

 

その後、雨降りでもない日にタカオは新宿御苑に向かい、池のほとりでユキノを見つけます。

 

そしてタカオが、開口一番こう言うんですね。

「なるかみの すこしとよみて ふらずとも われはとまらん いもしとどめば」

 

ユキノはこう答えます。

 

「そう、それが正解。」と。

 

 

 

最初にユキノが諳んじた歌。

「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨もふらぬか 君を留めむ」

雷が少し鳴り響いて、雲が広がり雨が降ってくれたら、帰ろうとする君を留めることが出来るのに。

 

対してタカオが諳んじた歌。

「雷神の 少し響みて ふらずとも 吾は留らむ 妹し留めば」

雷が少し鳴り響いて、けれど雨が降らずとも私は留まりますよ。あなたが引き留めてくれるのならば。

 

どちらの歌も万葉集に収められている、柿本人麻呂が詠んだ歌です。

 

雨に願いを掛ける想いと、雨なんて関係なしに引き留めてほしいという願い。

ステキな対の歌ですよね。

 

 

ユキノは、学校の古典の教師だと気づいてもらえるだろうと思ってあの歌を諳んじた、そして自身が抱えている問題は学校中の誰もが知っていることだと思っていた。けれど君は違う世界ばかりを見てたのね、とタカオに話しました。

 

その時、急に空に暗雲が立ち込め、雷鳴のすぐ後に豪雨が地面を叩きます。

二人は雨の中を走り、ずぶ濡れになりながら、いつもの東屋へ。

 

夏と言えど、豪雨に打たれて震える二人は共にユキノの家へと向かいます。

 

そして服を着替え、タカオはオムライスとサラダを作り、談笑しながら食卓を囲み、ユキノはコーヒーを入れて、二人はこれまでの人生で一番心穏やかで幸せな時間を過ごします。

 

雨がくれた、この上なく幸せな時間。

 

それいけ行け、タカオ!!想いを告げるなら、今しか無い!!!

 

 

「ユキノさん。」

 

「ん?」

 

「俺、ユキノさんが好きなんだと思う。」

 

「(ふぁっ・・・!)(頬染め、目うるうる)」

 

数瞬、沈黙が流れ、視線を落とし合う二人。

 

そして少し微笑みをたたえたユキノさんの口から出た言葉は・・・。

 

 

 

 

「(・・ふぅぅ)ユキノさん、じゃなくて・・・先生、でしょ?」

 

 

 

 

 

ああぁぁあぁぁああぁあっぁあぁあぁー―――――――――――――――ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

 

切ないよぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

 

その「先生でしょ・・・?」はあかん。

 

あんさん、退職したからもうウチらの先生ちゃうやんかーーー!!

 

あーーーーーーーーーーーーーーーーん、ユキノ先生のばかぁぁぁぁぁああぁああああ!!!

 

実家に引っ越すからとか、もう決めてたとか、あの場所で一人で歩く練習をしていたとか、靴が無くても、とか色々言わないでーーーーーーーーーーー!!

 

あーーーーーーーーーーーーーーーん(泣)

 

 

 

 

・・・すいません、取り乱しました。。

もうね、この幸せの絶頂からフラれるシーンへのBGMの移ろい方とか最高なんですよ。

雨音の使い方とかね。

表情の描き方も、セリフも。

うん、最高。すごく胸に刺さる。。

 

この後のシーン気になるでしょう?

タカオどうすんの?

え、二人の関係このままで終わっちゃうの?

って。

 

 

残り約10分あります。

胸にグッとくる、めっちゃくちゃ良いシーンが訪れます。

 

視聴後は何だか雨上がりの空のような清々しい気持ちになれます。

(あくまで個人の感想です)

 

 

けど、けれども、ここからは秘密です。

 

まだ見たことない方はぜひ、レンタルなどして見てみてください。

こんな終わり方でごめんなさい笑

 

 

ということで、今回の3000文字チャレンジ、お題「せんせい」でした。

 

あ、そうそう、余談ですが、「君の名は。」で黄昏時の説明をしていた女性教師の名前はユキちゃん先生と言います。

そして君の本名は・・・・・・雪野百香里。

 

三葉ちゃん、新宿のことはユキちゃん先生に聞くとだいたい分かると思うよ。笑

 

おしまい。

 

(花澤香菜さんの声、マジでかわいいわー。)

 

 

やーさん

最後までお読みいただきありがとうございました!

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