優美な和歌の世界 小倉百人一首を楽しむ!其の三

優美な和歌の世界 小倉百人一首を楽しむ!其の三

どうもー!やーさん(@ohokamudumi)です。

現代ではTwitterの140字の中でうまいこと言った人が人気を集めるわけですが、

古来より5・7・5・7・7の31文字で人の想いや儚さ、四季の移ろいなどを見事に表現しているのが和歌です。

数々の歌が千年以上経った現在でも人々の胸を打ち続けている。これってすごいことじゃないですか!?

ということで、最も有名な和歌集である小倉百人一首に収められている歌を改めて鑑賞してみたいと思います。

今回は21-30番!!いってみましょう!

 

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優美な和歌の世界 小倉百人一首を楽しむ!

 

21、今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな

いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな

 

素性法師

あなたがすぐに参りましょうと言ったばかりに、その言葉を信じて9月の夜長を眠らずに待っていたのに、あなたは来ることなく、とうとう夜明けに出る有明の月が出てしまいました。。

 

やーさん

作者は男性ですが、歌の主人公は女性です。激しい感情というよりは、言葉だけ上手な男性に翻弄され、呆れた女性のやるせなさを感じますね。

素性(そせい)法師は12番歌の僧正遍照の子であり、僧正遍照と同じく三十六歌仙の一人です。

長月は陰暦の9月。夜が長い晩秋の頃を指しています。

 

 

22、吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ

ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ

 

文屋康秀

山から秋風が吹き下ろしてくると、たちまち草木が萎れてしまう。なるほど、だから山風のことを嵐というのだろう。

 

やーさん

漢字の「嵐」という字は山と風を合わせた字です。そうした漢字自体の成り立ちを取り入れながら、秋の季節感を詠んだ、知的技巧に富んだ歌ですね。

文屋康秀(ふんやのやすひで)は平安初期の歌人で六歌仙の一人です。別称は文琳。

三河国に赴任することになった際に、小野小町に「一緒についてきてほしい」と誘ったそうです。

 

 

23、月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど

つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど

 

大江千里

秋の月を眺めていると、いろいろなことが限りなく悲しく感じられる。私一人だけのために訪れた秋ではないのだけれど。

 

やーさん

夏から秋に季節が変わる時、多くの人が感じるであろう、あの少し切ない気分になってしまう感傷を理知的に詠んだ歌ですね。「ちぢ=千々」と「わが身ひとつ」、数字の千と一を照応させている点にも技法的なおもしろさを感じる歌です。

大江千里は平安前期の歌人で、漢学者でもありました。在原業平・行平の甥にあたります。

この歌は白居易の詩句「燕子楼中霜月夜 秋来只為一人長」が元になっています。

 

 

24、このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに

このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみじのにしき かみのまにまに

 

菅家

今度の旅は急なことで、神に捧げるための幣すら用意できなかった。手向山の美しい紅葉を幣として捧げますので、どうか神よ、御心のままにお受け取りください。

 

やーさん

宇多上皇の吉野宮瀧御幸の際、道端の道祖神へ捧げる幣(きれいな布切れや紙切れ)の代わりに、美しく色づいた紅葉を捧げましょうと詠んだ歌です。秋の紅葉の美しさを感じられる歌です。

菅家=菅原道真のことです。35歳の若さで最高権威である文章博士となりました。

手向山は普通名詞であり、山中で旅人が旅の無事を祈って道祖神に供物を捧げるところを指します。

 

 

25、名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな

なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな

 

三条右大臣

恋しい人に逢える「逢坂山」、共に一夜を過ごせる「小寝葛」。その名前に背かないのならば、逢坂山のさねかずらを手繰りよせるように、誰にも知られずあなたを連れ出す方法があれば良いのになぁ。

 

やーさん

「逢う」と「逢坂」、「小寝(一緒に寝て愛し合うこと)」と植物の「さねかずら」、「繰る」と「来る」というように様々な掛詞や縁語が散りばめられています。人目を忍ぶ恋を、技巧を凝らして詠まれた歌ですね。

三条右大臣は平安時代中期を代表する政治家・藤原定方です。

27番歌の中納言兼輔と共に、醍醐天皇時代には和歌の中心的存在となった人物です。

 

 

26、小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ

をぐらやま みねのもみぢば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ

 

貞信公

小倉山の峰の紅葉よ、もし人の心が分かるならば、もう一度天皇がおいでになるまで散らずに待っててくれないかい。

 

やーさん

宇多上皇が大堰川(桂川)に御幸され、紅葉のあまりの美しさに、御子である醍醐天皇の行幸もあるべきだと仰られた際に、御供していた貞信公が詠んだ歌です。翌日に醍醐天皇の行幸があったようです。

貞信公は藤原忠平で、藤原氏が栄える基礎を作った人物です。

忠平は醍醐天皇の義理の兄にあたります。

 

 

27、みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ

みかのはら わきてながるる いづみがわ いつみきとてか こひしかるらむ

 

中納言兼輔

みかの原から湧き出て、原を二分して流れるいづみ川。その「いつ」という言葉ではないが、いったいいつ逢ったといってこんなに恋しいのだろうか。逢ったことすらないというのに。

 

やーさん

上三句は「いつ見」を引き出す為の序詞です。「いづみ川」と「いつ見き」と音を重ねて意味を転じています。また、わきては「湧きて」と「分きて」の掛詞です。まだ逢ったことのない人への憧れの歌として捉えると、みかの原の美しい情景と合わせて、爽やかな恋歌という印象を受けますね。

中納言兼輔は藤原兼輔で、紫式部の曾祖父です。

みかの原は甕原と書き、現在の京都府木津川市を指します。

 

 

28、山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば

やまさとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば

 

源宗于朝臣

山里は冬がとりわけ寂しさがまさるものだなぁ。訪ねてくる人もいなくなり、草木も枯れてしまうと思うから。

 

やーさん

冬の寒さや心細さがしみじみと詠まれた歌です。「かれ」は「離れ」と「枯れ」の掛詞となっています。

源宗于朝臣は平安前期の歌人で、光孝天皇の皇孫です。三十六歌仙の一人です。

官位に恵まれなかった不遇を嘆く歌を残しています。

 

 

29、心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花

こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな

 

凡河内躬恒

もし手折るのならばあてずっぽうに手折ろうか。真っ白な初霜が降りて、その白さのために霜と見分けのつかない白菊の花を。

 

やーさん

白菊の上に初霜が降りた、そんな晩秋の清らかな朝の光景と、それを見た作者の心を生き生きと詠んだ歌です。凛と冷えた空気と、美しい白を基調とした情景が目に浮かぶ素晴らしい歌ですね。

凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)は平安前期の歌人で、三十六歌仙の一人です。

古今和歌集の撰者の一人でもあり、紀貫之と並ぶ当時の代表的歌人です。

 

 

30、有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし

ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし

 

壬生忠岑

有明の月が冷たくそっけなく見えた。つれない態度を見せた女性との別れをした時から、夜明け前の暁ほど憂鬱で辛く感じるものはない。

 

やーさん

逢瀬に行った先の女性にとても冷たい態度で追い返された。その際に見た有明の月も女性と同じように白々しくとても素っ気なくて、それからというもの夜明け前ほど憂鬱な時間はないと、何ともしょんぼりした男の姿をよく表した歌ですね。

壬生忠岑は平安前期の代表歌人で、三十六歌仙の一人です。

藤原定家はこの歌を非常に高く評価したそうです。

 

 

以上、21番から30番歌までのご紹介でした!

情景が目に浮かぶような秋の歌が多かったですね。

季節ごとに好みの歌を見つけるのも良いかもしれません。

次回以降もお楽しみに!!

 

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やーさん

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