【感想】エロスとリアリティで読み解く!「カラダで感じる 源氏物語」(著:大塚ひかり)を読みました。

【感想】エロスとリアリティで読み解く!「カラダで感じる 源氏物語」(著:大塚ひかり)を読みました。
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どうも、やーさん(@ohokamudumi)です。

紫式部によって描かれた平安時代を代表する物語「源氏物語」

誰しもが多少なりとも、学校の古文の時間に教科書などで触れたことがあるかと思います。

 

やーさん

ぼくも以前から源氏物語には興味があり、ふと思い立っては読み始めたりするんですけど。さぁ今回こそ最後まで読み切るぞと読み始めても、いつも中途半端なところで終わってしまうんですよね。。

 

平安朝の宮中の雅やかな様子を背景に、乱れた男女関係、うずまく女の嫉妬、貴族の没落、世代の移り変わりなどが非常にリアリティをもって54帖もの長い物語として描かれる源氏物語。

現代においても色褪せることのない刺激的な話がたくさんあってとても面白いと感じる一方で、、、今一つ言葉の表現などがしっくりと自分の中に落ちて来ないというか(もちろん原文ではなく現代語訳版を読んでますが)、、世界観の理解が及ばないというか、、もっとフランクに読めたら良いのにとも思ってしまうんですよね。

きっと探せば、かなり読みやすい本もあるのでしょうが。

 

で、今回は先日図書館に行った時に偶然手にした本のご紹介です。

この本を読んだ後に「源氏物語」を読みときっと、平安朝の人々を取り巻く環境や思想をさらに深く理解でき、登場人物への愛情も深まり、そして乱れた男女関係の描写には更に興奮できると思います(笑)

では行ってみましょう。

 




 

「カラダで感じる 源氏物語」著:大塚ひかり

今回手にとった本がこちら。

「カラダで感じる 源氏物語」著:大塚ひかり

 

1996年にベネッセコーポレーションから出版された本です。

 

もう表紙の絵とタイトルでやられました(笑)

下に画像載せますね。

かわいい男女のキャラクターがすっ裸で踊ったり、ポーズきめたりしててとてもかわいいです。

カバー・扉イラストは漫画家の伊藤理佐さん。

タイトルとあいまって、これは絶対おもしろい源氏物語関連本だと直感しました。

 

著者は大塚ひかりさん。

1961年2月7日生まれ、神奈川県横浜市のご出身。

日本の古典エッセイストで多くの著書を出版しておられます。

ぼくは今回の「カラダで感じる~」がはじめましてでしたが、Wikiなどで見てみるとかなり「攻めた」タイトルの本が多いです(笑)

・『源氏の男はみんなサイテー 親子小説としての源氏物語』
・『ブス論』
・『日本の古典はエロが9割 ちんまん日本文学史』

などなど気になる本がたくさんあります。

またHatenaBlogで「猫も羽〈わ〉で数えましょう」というブログもされているようです。

 

 

「カラダで感じる 源氏物語」の構成とおもしろい点!

この本は全4章から構成されています。

以下では、それぞれの章で述べられている内容と、ぼくがおもしろいと感じた点をまとめていきます。

 

第一章 感じるエロス

この章では章のタイトル通り源氏物語の中のエロスに関して説かれています。

もう、1ページの中に「セッ○ス」という言葉が何度も踊ります(笑)

男女の恋の苦悩とすれ違いをこれでもかと描き出した「源氏物語」ですから、中心テーマは間違いなく「性」であるので、それは当然と言えば当然です。

性への興味は誰もが持つことでしょうし、その上、その愛欲が「タブーとされている関係性」の中で営まれようものならさらに興味をそそられることでしょう。

そして登場する姫君たちは全員が全員「美人」というわけではない、つまりは「ブス」も多く登場するという点が源氏物語をさらにおもしろくしています。

しかも美人の姫君よりもブスな姫君の方が、その容貌をより詳細に描かれます。
そこもまたおもしろい点で、作者は漢籍に詳しい紫式部が中国の「琱玉集」にある著名なブスの容貌に関しての記述に目を通していた可能性もあるのではないかと考察しています。

 

登場人物が普通の人間で、病気もするし死にもする。そして光源氏と姫君たちとの密室での秘め事が描かれる点は、源氏物語が登場する前の日本の古典との大きな違いであるということも述べられており、源氏物語がいかに当時の人たちにとって新しいジャンルであったのかということが説かれています。

 

第二章 源氏物語のリアリティ

源氏物語のすごいところ。
それは世界感や登場人物がとてもリアリティをもって描かれているというところです。

例えば紫式部は源氏物語の中に「夕顔」という姫君を登場させます。

彼女はブスでも美人でもない女とされていますが、若き日の光源氏をトリコにします。

それまでの「もてる女=美人」とされていたおとぎ話の世界と違って、「ブスでも美人でもないけど、なぜか男ウケする女」を描いた点に、紫式部の表現しようとした「リアルな世界」を垣間見ることができると作者は言います。

その夕顔を登場させる為に、周到に用意された舞台装置・タイミングについても述べられます。

 

その他にも、登場する男たちは皆「等身大」で描かれているとして、「寝取られる男・頭中将」、「無神経な男・夕霧」、「比べられる男・朱雀院」などが紹介されます。

そして主人公・光源氏のリアリティについても言及されており、そのリアリティの根源は「コンプレックス」から読み解けるとしています。
特に34・35帖の「若菜」の巻は源氏物語の世界の転換点であるとし、光源氏の「等身大の男」としての姿がさらけ出され始めると述べられています。

 

平安中期は「ノンフィクション」が求められた時代であり、故に源氏物語は当時の人々にウケたのだと作者は考察しています

 

第三章 五感で感じる源氏物語

「現代人においても、平安貴族においても五感全てをめいっぱい使う場面というのはそうそうなく、その五感が駆使されるのは○ックスくらいのものだろう。だから源氏物語で五感に感じるシーンといえば、○ックス絡みのシチュエーションが圧倒的なのだ。」

という前置きから始まるこの章では、人間の五感を通して源氏物語を読み解いています。

 

「視覚」では、「紫式部日記」中であまりにも詳細に描かれる女性たちの容姿に関する記述を例に挙げ、紫式部はとにかく「女の見た目」に興味のある人だったと述べています。
また、同性に対して向けられる非常にエロチックなその視線は「紫式部は同性愛者」であったという説にもつながるとしています。

 

「触覚」では肌と肌の触れ合いに関して説かれています。源氏物語では情事のシーンにおいてやけに肌の美しさがクローズアップされるのですが、これに対して作者は「『源氏』を読んでいると、肌は性器だ、とつくづく実感させられるのだ。」と述べています。

 

「聴覚」では、闇夜の中で掛けられた声、衣擦れの音、血のつながりで似る声、憑依した生霊が発する声、そして生きている者と死んでしまった者を対照的に描き分ける為に使われた音など、こういった物語の中における声や音の重要性が語られます。

 

「嗅覚」では、源氏物語の中に漂うさまざまな香りに焦点が当てられます。
香木や香原料を用いて作られた薫物(たきもの)の香り。その香りは着物や身体に焚き染められ、そして肌の触れ合いによって相手に移り情事の痕跡としてのちのちまで残るとされ、源氏物語に中で香りは非常にエロチックな演出をしていると述べられています。
また終盤の宇治十帖では、登場する男性主人公の名からして「薫」「匂宮」であり、香り高くエロスに満ちたエピソードが多いと書かれています。

 

そして最後に「味覚」
実は源氏物語には食事シーンや、食べ物に関する記述がとても少ないのです。なぜ少ないのか。
それは、武士が金の話をするのは下品だとされるように、貴族が食べ物にこだわる態度を見せるのははしたないと思われていたからだと言います。


食事シーンを描かれるのは分別のない乳幼児か、身分の低い者たち。
色恋や没落していく身分に悩み「食べず」に死にいく貴族たちと、生命力たくましく「食べる」受領階級の人々。描かれたそのコントラストからは、平安時代以降の受領階級の台頭が当然のものであったと感じられる、と作者は述べています。

 

第四章 失われた身体を求めて

最後の章です。
ここでは没落していく貴族の経済状況や、平安時代と現代の相似点などが考察されています。

「源氏物語」以前の物語で描かれる経済は「リアリティのない貧乏」とされ、源氏物語で描かれる経済はとても「リアリティのある貧乏」ということができるようです。

源氏物語の中で貧乏といえば「末摘花」ですが、彼女は源氏物語以前の物語で出てくる「貧乏だけど美人」というヒロインではなく「貧乏な上にブス」という設定です。
経済よりも愛をとったという美談で終わっていたそれまでの物語と、スタート地点から違う設定にすることによって源氏物語はよりリアリティを伴った物語となっていると作者は述べています。

そして貧乏ですが光源氏の妻となれた「末摘花」と対比するように紹介されるのが、未亡人の「落葉の宮」や、父である八の宮を亡くし経済的に困窮する「大君」、そして最後のヒロイン「浮舟」のお話です。

彼女らをとりまく経済的困難は、彼女らの思想や人生そのものを変化させていきます。

 

最後には作者が考える、源氏物語とは結局何を描いた物語だったのか、なぜ浮舟が入水自殺を図りながらも蘇生し、あのようなラストで締めくくられたのか、といったことが「体」や「心」といった言葉を用いて語られます。

 

まとめ

以上、「カラダで感じる 源氏物語」のご紹介でした。

個人的に最初の章のエロスのインパクトがすごくて、一気に読みました(笑)

物語が書かれた当時、この源氏物語はそれまでの物語と一線を画し、とても新しい物語としてウケたのだということがよく分かりました。

細部に渡りリアリティを追い求め、自分が居る世界の暗い部分にまで光を当て、フィクション・ノンフィクション織り交ぜて、新しく魅力的な物語を生み出した紫式部はとてもすごい人だったんだなと再認識しました。

とてもおもしろい本なので、源氏物語や紫式部に興味のある方におすすめします。

 

最初に書いた通り、ぼくは源氏物語を最後まで読んでいないので、この本を読むことでいわゆる「ネタバレ」がたくさん出てきました。

 

「え、光源氏も妻を寝取られるのっ!?」

「うわぁ、、光源氏ってこんな最期を遂げるんやぁ。。」

「わわっ、浮舟って匂宮にそんな仕打ちされるの?」

 

みたいな(笑)

 

そんな印象に残る衝撃的なシーンを探して、もう一度源氏物語を読むことに挑戦してみたいと思います。

 

 

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やーさん

最後までお読みいただきありがとうございました!

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