【感想】幻想的な祇園祭の宵山に迷い込む。「宵山万華鏡」(森見登美彦)を読みました。

【感想】幻想的な祇園祭の宵山に迷い込む。「宵山万華鏡」(森見登美彦)を読みました。

2020年の夏はコロナ禍で、なーんにもイベントが無い空虚な夏となりそうで、なんだか切ないですね。

どうも、やーさんです。

 

京都の夏と言えば、7月のまるまる一か月をかけて行われる「祇園祭」ですよ!

7/14~17にかけての祇園祭(前祭)の宵山~山鉾巡行は夏の一大風物詩として、京都市民だけでなく全国から「京の夏」を楽しもうと、数万人という人が京都に集う大きな催しです。

今年のコロナの影響で、中止となってしまったことでショックを受けている関係者も多いことでしょう。

元々の祭りの起源が疫病退散なのに、疫病のせいで山鉾も立てられず巡行もできないなんていうのは、何とも皮肉だなぁ·····ゲフンゲフン(咳払い)。

 

まぁ中止はしょうがないですね。

広い歩行者天国の道で動けなくなるくらいに密ですからね・・・宵山は。

 

↓は去年(2019年)の宵山の様子です。すんごい人の多さでしょ?

四条通の南北に広がる通りのあちらこちらに山鉾がそびえ立ち、夜の闇の中にたくさんの提灯の明かりが灯ります。

路地に入ると一方通行規制がかけられていて、行きたい場所にもなかなか辿り着けなかったりします。

烏丸通の両脇にはおびただしい数の屋台が並び、コンチキチンの祭囃子と粽売りの少年少女の声がそこかしこから聞こえてきてね。

梅雨明け直前の生ぬるい風が屋台の色んな美味しそうな香りを運んできて、人々の熱気と相俟って息をするのも一苦労。

いつもの京都とは違う空間がそこには現れます。

それが宵山です。

 

今年は、この夏の風物詩を楽しめないのかぁ、と寂しい思いでしたので、こんな本を読みました!

 

 

「宵山万華鏡」

 

京都を代表する大人気作家の一人である森見登美彦さんの作品で、集英社から2009年7月に刊行されたお話です。

 

彼の作品はアニメ化もされた「四畳半神話大系」や「有頂天家族」をこれまでに読んだことがあり、現実と非現実が入り混じったような独特の浮遊感を感じる作風がとても個性的でおもしろいんですよねぇ。

あと森見作品の特徴と言えば、物語の舞台がほぼほぼ京都なんですよね。

ぼくも大学進学で京都に出てきて、現在進行形で仕事場が京都ですので、森見作品で出てくる地名は馴染みがあるところも多く、容易にイメージを膨らますことができます。

 

Twitterで仲良くしていただいているぶっちーさんは、この森見登美彦作品のファンで、その影響もあって京都旅行に15回も来られたことがあるとのこと!!すごい!!

 

ちょうどこのツイートのやり取りをしていて、森見登美彦の名前を見て「おっ!久しぶりに森見作品を読みたいな!」となって。

しかもちょうどこの時期なので、今回「宵山万華鏡」を手に取ったという経緯です。

 

「宵山万華鏡」はどんな内容?

この「宵山万華鏡」という本は、祇園祭宵山の一日を舞台に、不思議な事件が交錯する連作短編集となっています。

お祭りの夜ってのは、何だかちょっと不気味で不可思議な力を宿してる気がしますよねぇ?

そんな非日常感、ともすれば少しホラーな要素も含みながら、宵山の雰囲気が文章からありありと伝わってくるような、魅力的な短編集です。

 

お話は全部で6つ。

それぞれをあらすじとも言えないくらい、簡単にご紹介~。

 

・宵山姉妹
バレエ教室終わりに宵山へ出かけた小学生の姉妹。姉とはぐれた妹は赤い浴衣の女の子達に誘われるように宵山の街を彷徨い、行き着く先は・・・?

 

・宵山金魚
高校時代からの友人であるへんてこな男・乙川に祇園祭の案内をさせようとする藤田だったが宵山の街ではぐれてしまう。その上、誤って立ち入り禁止区域に入ってしまい、祇園祭司令部へしょっぴかれた彼を待ち受けていたのは・・・。

 

・宵山劇場
ある人からの依頼で集められた大学生たち。彼らは「偽祇園祭」を作る為に日夜奮闘する。阿呆たちが集う青春ストーリー。

 

・宵山回廊
千鶴は、宵山の日に叔父から「明日からはもう、会えなくなる」と言われた。彼の口からこぼれた信じがたい告白、そして彼の持つ万華鏡の先に映し出されたのは·····。

 

・宵山迷宮
何度も繰り返される同じ朝。柳は何度も宵山の日を繰り返す。不可解な父の死と、執拗に狙われる父の遺品。永遠に続く時の迷路。どうすればこの宵山の一日から抜け出すことができる?

 

・宵山万華鏡
バレエ教室終わりに宵山へ出かけた小学生の姉妹。ほんのちょっとした出来心で、妹の手を放しはぐれさせてしまった姉。姉は妹を探し宵山の街を歩き、不可思議な世界に迷い込む。

 

と、こんな感じの作品となっています。

 

「宵山万華鏡」のここがおもしろい!

 

どの作品も微妙にリンクしていて同じ人物名が出てきたり、同じ時間軸のお話を人物Aと人物Bの視点から描いていたりと、おもしろい構成になっています。

上の各タイトルを色分けして書いてみましたが、この同じ色で表されているお話同士が対(または前日譚的なお話)になっています。

全てのお話が繋がっているようで、けれど何か違和感を感じるような仕掛けがしてあったりと、とても不思議な世界に迷い込ませられる仕立てとなっているんですね。

 

例えば、上の色分けを見てもらうと分かるように、本来であれば宵山姉妹」宵山万華鏡」が対になっているので、連続で並べてしまえば良いのに、あえてこの2つの話で他のお話を挟んでるんですよ。

この2つのお話を連続で読んでももちろん十分におもしろいですし何の問題もないのですが、他のお話を読んでから「宵山万華鏡」を読むからこそ、見えてくる世界(というより迷い込む世界?)があって、この構成はすごいなぁ!と感心しました。

 

 

個人的に一番好きな話は、宵山金魚ですね。

盛大な悪ふざけというか、阿呆というか、意味がないことに意味があるみたいなお話なんですけど。

 

良いなぁと思ったのが「お前の頭は天窓が開いている」っていう言葉。

ヘンテコなことばかりをする乙川に対して藤田が言った言葉なんですけど、とても素晴らしい形容だなって思うんですよね。

変わり者に対しては変態、阿呆、奇人、変人、酔狂人・・・などなど色んな呼び方がありますが、「頭の天窓が開いている」だなんて、とても素敵なワードだなぁと。

ぼくも頭の天窓開いてみたいわー!!パッカーーーーーン!!って。

で、「超金魚」を育ててみたい。

 

 

あと、衝撃的だったのが「奥州斎川孫太郎虫」

 

ご存知の方おられますか?

この変な名前の虫の串焼きを、乙川は藤田にすすめるんですね。

「宵山名物だ」とか「みるみる精がつく」とか嘘なのか本当なのか分からないことを言って。

もちろん藤田は、こんなもん食うか!って拒否するんですが。

やけにこの虫の形状に関して細かい記述があるので、ほんとに存在する虫なのかなぁーって思って検索してみたんですよね。

 

その結果、ほんとに実在したんです・・・・けどね。

 

何というか・・・画像で検索かけるんじゃなかったなぁって・・・。

 

ちょっと、、いやかなり、後悔してます。

 

「奥州斎川孫太郎虫」クリックすると画像に飛べますよ。

けど飛ばない方が良いです。うん、見ちゃダメ。軽い気持ちで押しちゃだめですよ?絶対に押さないでくださいね。絶対ですよ?押しちゃだめですからね?約束ですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見ちゃった?ねぇ?見ちゃったの?

 

アレ、ヤバくないですか??

 

おえぇぇぇぇぇっ・・・てならなかったですか?

 

 

 

 

 

え?まだ見てない?

 

じゃあ、もう一回リンク置いておきますから。

 

 

 

「奥州斎川孫太郎虫」←押すなよ!押すなよ!!押すなよ!!!()

 

 

 

 

ということで、「宵山万華鏡」のご紹介でした!!

興味のある方はぜひ、夏の京都に想いを馳せながら読んでいただければと思います。

ちょっとホラーな雰囲気もあるので、夏にぴったりですよ。

 

いや、奥州斎川孫太郎虫が一番ホラーかもしれないですけどね・・・笑

・・・押しちゃだめですよ(ニヤリ)

 

 

 

 

やーさん

最後までお読みいただきありがとうございました!

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