【読んだ本】 「嫌われる勇気」はアドラーの言葉も良いけど、「青年」がほんと良い味を出しているよね!
先日の日記でも書いたんですが、「嫌われる勇気」という本を読みました。
古賀史健氏と岸見一郎氏の共著で、「アドラー心理学」の素晴らしさを説いた本です。
アルフレッド・アドラーはフロイトやユングと並ぶ心理学者です。オーストリア出身の精神科医で、20世紀初頭に活躍した人物と紹介されています。
本書「嫌われる勇気」は哲学者である「哲人」と、悩み多き「青年」の対話から、「人生を幸せにする」ために有用なアドラー心理学の要点が語られています。
2人は「どうすれば人は幸せに生きていけるか」という哲学的なテーマを、全5回(夜)に分けて話し合います。
二人が語り合う場所はいつも本がたくさん積まれた哲人の書斎で、どうも京都のはずれにあるようです。(かつて1000年の都と呼ばれた古都のはずれにある、と書かれています。)
この本のおもしろさの最大要因は、自己啓発本として、幸せに生きるための具体的な思考方法が数多く提示されていることはもちろんのこと、悩める「青年」の存在がその大部分を占めていると言っても過言ではないです。
玉石混交、さまざまな本があるのは承知の上ですが、基本的に自己啓発本って胡散臭いですよね(失礼)。
ツラツラと
「この世界が幸せかどうかはあなた次第!」
とか
「実はこれをするだけで、あなたは、幸せになれる!」
みたいなことが書いてあるだけの本だと、
「はぁ?そんな綺麗事ばかり言われても、そんな一般的な常識レベルから外れたことを実践するのとか無理!」
「バカ言ってんじゃあねぇよ!!」
みたいな感想を持つことが多いのです。(個人の感想です。バカなんて言っちゃダメですよ。反省。)
が、
この「嫌われる勇気」に出てくる「青年」は基本的なスタンスとして、
「世界はめちゃシンプル!人は今日からでも幸せになれる!アドラー心理学さえ正しく理解して実践すればね!」
と説く哲人に対して
「そんな理想論、論破してやるー!!ι(`ロ´)ノムキー」
的な態度で食ってかかってくれます。
言わば、読者のツッコミを代弁してくれている訳で、そのおかげで哲人が提唱するアドラーの「言葉」に対して、更に深い理解が得られるようになっています。
そして、この「青年」は、「自己啓発をしたい!」「自己肯定感を高めたい!」「もっと楽に、幸せに生きたい」と考える読者(=ターゲット)をそのまま写し取ったかのようなキャラ設定になってるんですよね。
簡単に「青年」を紹介すると、
・幼いころから「出来る兄」と比べられて、両親に軽んじられてきた。
・自身を劣等感の塊と表現するくらいに、自分に自信がない。
・自分の悲観的で自意識過剰な性格も、顔も背格好も好きになれない。
・現在は図書館の職員をしているが、その仕事に関しても「私の代わりなどいくらでもいる」と考えてしまい、誇りや自信を持てない。
・自分を変えたいとは思っているが、人はそう簡単には変わらないという考えを持っている。
ぼくの場合は自身ではなく、「私は、自己肯定感低いから·····」といつも自ら言っている奥さんそのままやなぁーと感じながら読んでいました。
うーん、ターゲットの多数を共感の渦に飲み込むこのキャラ設定、お見事!!(あくまで個人の感想です)
そういった機能的な「青年」の存在意義の有用性もさることながら、ぼくがもっとこの本を気に入った部分が、「青年」の「哲人」への噛み付き方です。
もうね、痺れちゃうんですよね!!
何!?この言葉のセンス!!?
時折見せる小物感もかわいいっ!!
時にブチ切れ、時に怪しく笑い、さまざまな比喩表現も駆使しながら、穏やかに話す哲人の鼻先に齧りつかんばかりに食ってかかるんですよ。
あぁ、素晴らしきかな、「青年」の語彙力。
って感じで、引き込まれてしまいましたよ。
ちょっとだけピックアップしてご紹介しましょうね。
「・・・・・・いやはや先生、あなたは優しそうな仮面を被って、相当に恐ろしいニヒリストですね!」(引用:「嫌われる勇気」第一夜 P.35)
「トラウマは存在しない」「怒りの感情によって行動が制御できないのは嘘」などと哲人に説かれて到底納得できない青年は、いきなり初対面の年上の男性に向かって上記のような発言をします。
「相当に恐ろしいニヒリストですね!」なんて言葉なかなか出てこないでしょ。
「・・・・・・先生、あなたはわたしをペテンにかけようとしている!認めるものですか、そんな哲学、わたしはぜったいに認めませんよ!」(引用:「嫌われる勇気」第一夜 P.47)
自分が不幸なのは自分がそうなることを選択しているから、という哲人の言葉に真っ向から対立する青年。「認めるものですか、~」からのくだりがえらく芝居じみたセリフになってます。
「(中略)他者の視線が気になって、いつも他者を疑いながら生きている。自然に振る舞うことができず、どこか芝居じみた言動になってしまう。そして性格だけならまだしも、自分の顔も、背格好も、どれひとつとして好きになれません。」(引用:「嫌われる勇気」第二夜 P.64)
青年が哲人に向かって自分の短所や好きになれない部分をあげつらっている場面です。ちゃんと自分の言動が芝居じみてしまっていることは自覚しているようです笑
「ええい、このサディストめ!!あなたは悪魔のような御方だ!!そうです、たしかにそうですよ!わたしは怖い。対人関係のなかで傷つきたくない。自分という存在を拒絶されるのが、怖ろしくてならないんです!認めようじゃありませんか、まったくそのとおりですよ!」(引用:「嫌われる勇気」第二夜 P.69)
哲人に図星をつかれて荒ぶっている青年です。「ええい」て笑
哲人をサディストや悪魔と罵ったあげく、半ばやけくそになって自分の弱さを認めていますね。
こんな暴言を吐かれても哲人は「認めることは立派な態度です。でも~」と穏やかに続けます。
「ふふふ、嫌いな人間でしたら、何人でも候補が浮かびますよ。」(引用:「嫌われる勇気」第二夜 P.119)
他者を「敵」と見なし「仲間」だと思えない理由に関して、哲人が説いている際の青年の発言です。
暗いことを「ふふふ」と笑いながら言っちゃうこの感じ、「イヤな奴感」がしっかりと出ていますね笑
「先生、あなたはやはりニヒリズムの毒に冒されている!究極的には「わたし」のことを考えて生きている?それでもいい、ですって?なんと卑劣な考え方だ!」(引用:「嫌われる勇気」第三夜 P.135)
人は究極的には「わたし(自分)」のことを考えて生きているし、そう考えてはいけない理由はないと説く哲人に対して、どうしても納得のいかない青年の発言です。
哲人と会って話すのも3回目となり、噛みつき方の鋭さが増しているように感じますね。
そして更に幾度かの意見交換がなされ、青年の哲人に対する対立的な感情は最高潮に達し、こう続きます。↓
「先生、あなたの議論は人間を孤立へと追いやり、対立へと導く、唾棄すべき危険思想だ!不信感と猜疑心をいたずらに掻き立てるだけの、悪魔的教唆だ!」(引用:「嫌われる勇気」第三夜 P.135)
「ふふふ、あなたはおもしろいボキャブラリーをお持ちだ。」とは上記の青年の発言に対して哲人が放った言葉ですが、ぼくも全く同意見です笑
いかがでしたでしょうか。
青年の語彙力溢れる噛みつき方の数々。
ご紹介したのはほんの一部で、ほかにもまだまだ名言的な言葉がたくさんあります。
気になる方は、ぜひ一度読んでみてください。
今回の記事では「青年」にフォーカスを当てましたが、本筋の自己啓発的な内容としても「なるほど!こんな考え方もあるのか!!」と目から鱗が落ちるような「気付き」がたくさんありますので、そちらが気になる方もぜひ一度お読みいただければと思います。
ぼくは「嫌われる勇気」を読んだ感想として、「アドラー心理学」はなんだか「度の強すぎるメガネ」のようだなと感じました。
複雑に絡まったややこしい「世界」や「人生」、おぼろげな「幸せ」の形なんかが、このメガネをかけるととてもシンプルでノイズの少ない姿形で見えてくるのですが、ちょっと明るく見えすぎて目が焼かれてしまいそうにもなります。
そしてアドラー心理学を誤って理解してしまうと、間違って消し飛ばしてしまったノイズに足元を掬われてしまう危険性も持ち合わせていそうです。
大事なのは、新しく知った「考え方」をどう活かすかですよね。
本文中でも語られていました。
「大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである」
と。
普段の生活のさまざまな場面で、「アドラー心理学」の「考え方」は応用できると思います。
自分にあった形で取り入れて、よりよく人生を歩んでいけたら良いな!っと。
ちなみにぼくは極度の近視ですが、メガネを新調する際、いつも一番よく見える度数より一段下げて作ってます(だから何だって話ですが)。
あ、そうそう。
ネタばれ的な内容を最後にひとつだけ。
5回の哲人との語り合いを通して、「アドラー心理学」の素晴らしさを実感した青年は、図書館の職員を辞めて、なんと教師になります。
未来ある若者たちに「アドラー心理学」のすばらしさを教え広めようと実践するのですが、しっかりと挫折。
「嫌われる勇気」内での最後の夜から数えて3年後に青年は再度哲人の元を訪れ、また噛みつきまくります笑
それが2冊目の「幸せになる勇気」です。
「嫌われる勇気」が宝の地図だとすると「幸せになる勇気」がコンパスである、と紹介もされていましたが、確かに2冊とも読む方が「アドラー心理学」の理解度は深まります。
ぜひ、合わせてどうぞ。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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